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温孔知新 素晴らしき謄写印刷の世界

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温孔知新 素晴らしき謄写印刷の世界 (aky-0008)

販売価格(税込)
¥1,100
在庫状態 : 在庫有り
数量

後藤 卓也 著
体裁:A4判 / 56貢
送料・梱包料 当社負担

 
【温孔知新 素晴らしき謄写印刷の世界】が山形市立図書館「小荷駄のみどり出版文化賞」を受賞しました!
 
 
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P10-11-01

p20-21-01

 

 
 

人間技の素晴らしさ、凄さ

(一社)日本グラフィックサービス工業会 山形県支部長
山形謄写印刷資料館 館長        
中央印刷株式会社 代表取締役 後藤 卓也

 日頃は山形謄写印刷資料館の運営に対してご支援ご協力いただきありがとうございます。山形謄写印刷資料館は亡き父、後藤義樹が1996年2月に設立してから2021年2月で25年になります。
 この度設立25周年記念に、2016年1月より私が山形県支部長を務めています印刷組合の団体である一般社団法人日本グラフィックサービス工業会の機関誌「グラフィックサービス」に丁度25回にわたって連載した「温孔知新」を単行本化しました。

 一般社団法人日本グラフィックサービス工業会(以降はジャグラと略称で表記させていただきます。)は、全国の謄写印刷業者が集まってできた組合が最初のルーツです。2015年に守田輝夫現常務理事から組合のルーツである謄写印刷についての記事を来年1月から1年間連載してもらえないかという依頼がありました。日頃から書き溜めていた謄写印刷についての文章がいくつかありましたので、二つ返事で了解しました。ところがこれが大変な事で、一回あたり約2,500字の文章に掲載写真数点を載せるために資料を写真撮りしなければなりません。内容検討に一日、文章作成に一日、載せる資料を探すのに一日、資料の写真撮影やスキャナ撮りに一日、と最低丸四日はかかります。
 もちろん文章を書くのが本業でないし、日々の営業活動の傍ら掲載文を作らなければならなく、最初は以前書き溜めていた文章を基に資料作成するので比較的楽でしたが、次第次第に書き溜めていたネタが切れてきます。そして、原稿をジャグラ本部に送ると、すぐに次号の原稿催促が来るといったあんばいで、休日返上で原稿作成しました。原稿作成は大変な事ですが、一方楽しみでもあり、千人以上の人が見る以上出鱈目は書けないし、謄写印刷の様々な側面を勉強する機会を与えていただいた、いい機会だったかなと思っております。

 謄写印刷の事をいろいろと調べていると、一番に感じる事は、人間業の素晴らしさと凄さです。謄写印刷は基本的には制作者である人間が、緻密な作業で印刷原版を作り、印刷も一枚一枚手刷りであり、多色刷りの場合には一版一版刷り重ねていく訳です。その出来上がった印刷物は今の私達が見ても、真似できない美しさにあふれています。
 例えば鈴木藤吉が制作した昭和初期のチラシを見てみると、文字はフリーハンドなので一つ一つの字体が全部異なり、今のパソコンフォントの書体で作ったチラシでは、逆立ちしても遠く及ばない美しさにあふれています。

 連載記事のタイトル「温孔知新」は皆さんお分かりの通り「温故知新」と「孔版」とが合体したタイトルで、守田さんか、編集担当の藤尾泰一さんが考案したタイトルと記憶しておりますが、的を得たタイトルであったと思います。あくまでも人間が主役で、人間の、人間による、人間のためのコミュニケーションツールが印刷であるという基本はこれからも永遠に変わらないのではないかと思いますし、変わってほしくないと念願します。
 今年になってのコロナウィルス蔓延によって、「絆」に代表される「みんなで一緒に頑張る」という日本人の、世界にも誇れる素晴らしい国民性がだんだんと失われるのではないかとの危惧があります。改めてこれまで築き上げてきた先達方の偉業を振り返る事は、そんな日本人の国民性の回復のきっかけにならないだろうか。と念願いたします。
 それではこれから我々の先達たちが創る謄写印刷の素晴らしい世界を堪能下さい。