2.ガリ版の世界に入りこむ

 その本というのは、志村章子著「ガリ版文化を歩く」という本です。父親の熱心な姿を見ていたこともあり、何気なく買い求めたのが、そもそもこの世界に入ってしまうきっかけでした。何回か読んでいるうちに、この世界の奥の深さがわかってきたのです。5月の段階では文翔館での展示会というのは全く考えていない状況で、夏場ぐらいまでにある程度集めて知人に公開する程度のものでした。

 6月に入って、いよいよやってみようということで、あらかじめ父が作った「寄贈品募集」の文書を持って各団体・業者への呼びかけが始まりました。すると、「○○さんが今までやっていた。」とか「○○さんがうまかった。」といった情報が、次々と入ってきました。そして、いろいろな方を紹介紹介で歩く日々が始まりました。
それらの人々は皆30分以上ガリ版の魅力を熱っぽく語り出します。語る目が生き生きとしていて熱気がこちらに十二分に伝わってくる思いがしました。いろいろな人々に会っていくうちに、ガリ版に対し、熱が入っていく自分にとまどいを覚えるのでした。