1. ことの始まり

 平成8年2月のある日、私の父が突然「ガリ版博物館を作っぺ」と言い出しました。県文翔館にたまたま見学に行った父が、その一室に知人が寄贈したガリ版の機械、道具が置いてあるのを見て、急に思いたったようです。文翔館での展示会の最初のきっかけは、文翔館であったのです。父の言う思いつきは、その場で終わる場合が多いのですが、今回ばかりは違っていました。

資料館の構想は、この日から始まりました。私も最初は全く関心がなかったのですが、父親一人でいろいろな所によびかけせっせと資材を集めていたようです。事実、仕事の上でも印刷会社の場合、2~4月のいわゆる年度末年度始めは、かき入れ時であり、かなり忙しくなる時期です。「道楽親父が何かやっているな」というのが、この頃の実感でした。5月になり偶然ある本に出くわしたのです。この本とのめぐり逢いがなければ、その後の全てがなかったといっても過言ではありません。